日 時:平成28年6月
平成27年度「第37回 学校茶道エッセイ」について、今回も裏千家茶道を学ぶ学生・生徒から多数の応募があり、横浜学校茶道連絡協議会からも4名の入賞者がありました。ご紹介させていただきます
学生の部
佳作 横浜国立大学 加藤宏幸 「決まりから離れるということ」
生徒の部
第1席 青山学院英和中学高等学校 中野莉々花
「一本の茶杓に思いをこめて」
佳作 神奈川県立横浜緑ヶ丘高等学校 M.O
「平常心是道」
〃 神奈川県立横浜翠嵐高等学校定時制 佐々木はるき
「思いやりと美しさ」
第1席に入賞した、青山学院横浜英和中学高等学校の中学3年生 中野莉々花さんのエッセイを掲載させていただきます。
「一本の茶杓に思いをこめて」
「茶杓」それは当時中学一年生だった私にとってはお茶をすくうためにある一本の棒にしか過ぎませんでした。しかし、その私の考えが一変したのは二年生になって流儀が変わり新しく教えてくださる事になった山崎先生の言葉を聞いた時でした。
「お茶杓も大切な道具。その短い茶杓をできるだけ長く見せるようにお点前をするんですよ。」
それを聞いた時、お点前ができるようになって間もなかった私は今まで自分のやってきたお点前を思い出しました。考えてみると、私は手順ばかりを気にして自分の使っていた道具を少しも目立たせようとしていなかったのです。今までのお点前は形のみで心がこもっていなかったんだ。私はそれから「道具をひき立たせるお点前」をしようと思いました。そのためには手順を身にしみこませる必要がありました。手順がわかっていない以上は、どこでどの道具を目立たせるのかもわからないと思ったからです。
何度も稽古してなんとか手順を身につけてから、私は次に、一つ一つの道具を優しく丁寧に扱うように注意してお点前をするようにしました。その後も徐々に「道具をひき立たせるお点前」という目標へ向かって一歩ずつ進んでいきました。
そして、その私の目指したお点前を初めて知らない大勢の人の前で発表する機会がありました。学校の文化祭です。初めてそのような状況でお点前をするのは本当に緊張しました。今、振り返ってみると、その時のお点前は、無我夢中で行っていて、緊張からかいつもやっているものとは何か少し違うものになってしまったと思います。でも、そんな中でも私の目標であった「道具をひき立たせるお点前」をするべく稽古してきたもの、例えば帛紗の捌き方、柄杓の扱い、そして私の考えの変わるきっかけであった茶杓の扱い方などは本番ではいつもと変わらない道具との接し方ができました。自分の中ではお点前の手順だけは身にしみこんだと思っていたけれど、この時知らない内にこの道具を使うにあたってのひき立たせる方法もだんだん身につけていっていたんだと感じられました。私はそれと同時にもっと道具をひき立たせる方法を身につけていく事でどんな状況でもベストのお点前ができるようになると思ったので、それができるようになるまでもっと努力していきたいです。
私が一本の茶杓から学んだのは、細くて短い目立たない存在のものも私たちが息を吹き込んであげる事でその存在を大きく開花させられる事です。一本の茶杓に思いをこめればその一本の茶杓はひき立った自分の存在で、今度は反対にひき立たせた私たちのお点前に花をそえてくれます。
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